新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、ドイツへの交換留学から緊急帰国し、14日間の隔離先のホテルからお届けしております。
先日、大学側から交換留学プログラム終了の知らせがあり、苦渋、緊急の決断の末、帰国に至りました。
留学が終了したことは無念ですが、帰国することにも当然メリットはあるので、無事着いた今ではこれからの日本での生活にワクワクしているところです。
留学が中止になり緊急帰国して隔離される、なんて体験はそうそうできるものではないと思い、自分自身この一連の騒動を振り返るためにも記事にしてみようと思いました。
時系列でまとめたので、同じような境遇の方は「そうだったなぁ」と共感しながら読み進んで頂けると思います。
2019年 10月 ~ 2020年 1月
僕のドイツ交換留学は2019年の10月から始まりました。2020年8月までの11ヶ月の留学を予定していました。
思い返すと色々ありましたね~。
行きの飛行機の乗り換えをミスったり、到着後の手続きが大変だったり、多くの人に出会うことができたり、毎週どこかへ旅したり。
すべてが新しく、すべてが最高でした。
コロナウイルスについては、 2020年1月末頃に中国で爆発的に広がり始め、武漢市が閉鎖されたりしました。
この頃は、ちょっとやばいんじゃね?みたいな雰囲気はありましたが、日本・ドイツともに特に大した対策が取られるわけでもなく。
これから起こるパンデミックの脅威を皆が予想し危機感を高めていれば、この後の対応も違ったことでしょう。
2020年 2月上旬
2月に入ると、日本にもコロナの脅威が本格的に襲いかかりました。「ダイヤモンド・プリンセス号」などですね。
日本だけでなく、多くの国で初の感染者が確認され始めます。1人感染者が出るとその周りでどんどん広がる感染力の強さを見て、各国の危機感はやっと高まり始めました。
この頃になると、海外、特にヨーロッパでのアジア人バッシングがメディアで頻繁に取り上げられるようになりました。
僕自身はどうなのかというと、ドイツであからさまに差別的なことをされた覚えはありません。ドイツは移民が多い上、歴史的背景から差別に対して非常に敏感な国だからかもしれません。
まぁ、僕が鈍感なだけかもしれませんがw
ただ、フィンランドに日本人の友達と二人で旅行した時に、通りかかったティーン3人組がこちらを見ながら「気をつけろ、コロナがうつるぞ」みたいなことをひそひそ話しながら通りすぎていった、という経験をしました。
フィンランド語は分からないので定かではありませんが、「コロナ」と聞こえたのと、あの目と態度を見れば、さすがに自分たちのことを言われてるって分かります。
それ以外はフィンランドの方は非常に親切で優しかったので素晴らしい旅になりました。フィンランドは最高の国なので、誤解してほしくないです。
ただ、そういう種類の人は世界中どこへ行っても一定数いるということです。
人種差別問題とか種々の国際問題は、こういう異常事態の時こそヒートアップしがちですが、感情的になってどうにかなるならとっくに解決してます。
特に人種差別については、ほんの数十年前までは普通のこととして捉えられてきたのですから、いきなり無意識レベルまで0にしろ、と言われても現実的に難しいでしょう。長い時間をかけて解決していく必要があります。
それに僕らの負の歴史だって無視できないわけで、それを棚上げして一方的にヒートアップするのも傲慢極まりない話です。
これは差別に対して寛容になれ、という意味では全くありません。具体的な対策案もないのにワーワー言っても事態を悪化させるだけだ、という意味です。
もし嫌な思いをしたら、感情的にならずきちんと言い返すか、 完全無視するかのどちらかでしょう。
脱線してしまいましたが、この頃から世界規模のコロナの広がりにより、コロナに感染するということ以外の事柄にまで影響が及ぶようになりました。
2020年 2月下旬
2月下旬になると、日本国内はコロナの影響でパニックになりました。
トイレットペーパーやティッシュなどが品薄になるとデマ情報が出回り、スーパーで買い占めが起こったり、ディズニーランドやUSJが休業したりなどです。
東京オリンピックの延期もささやかれ始めました。
こういったニュースをドイツからみていた僕は、ぶっちゃけ「日本やばいなー」くらいな感じでした。
実際この時点ではヨーロッパで感染者はそれほど増えておらず、正直にいうと、まだ「対岸の火事」でした。むしろドイツ安全じゃん、とさえ呑気に思っていました。
この後起こることをまだ知らずに..
2020年 3月上旬
2月末から3月上旬にかけて、ドイツ国内で感染が驚異的なスピードで爆発的に拡大していきます。しかし、この時点でもなお、大きな対策は取られていませんでした。
3月第一週に、日本からの友達がミュンヘンへ旅行に来るとのことだったので、僕もミュンヘンへ行って一緒に観光しました。
友達曰く、来るかどうかすごく迷ったけれど、この時点ではまだ渡航規制もなかった(その後すぐに規制されるなんてこの時点では想像もしていなかった)し、数ヶ月前から予定していた念願のドイツ旅行なので、来たとのこと。
よく考えた上で万全の対策を施して来てくれて、日本食もいっぱい持ってきてくれて、感謝しかなかったです。良い友を持ったと思います。
そういえば、その友達が旅行中、
「アメリカに留学している友達が外務省の危険度がレベル2になったら強制帰国だっていってたけどマジ?」
とか言ってたっけ。
そんなまさか~、と言い返したような。フラグだったかw
この旅行後少し経ったくらいから、一気にドイツ、ヨーロッパのコロナの事態は深刻化していきます。対策も一気に強化され、旅行はおろか、外を出歩くことさえ難しくなっていきました。
そして、3月10日にはドイツ全土の危険度レベルが「レベル1(十分注意してください)」になりました。
いよいよやばくなってきたな、と感じ始めました。
激動の一週間 2020年 3月16日~
そして、時は訪れます。3月16日、外務省はドイツ全土の危険レベルを「レベル2(不要不急の渡航は止めて下さい)」に引き上げました。
これに伴い、大学側は「交換留学プログラムの中止・中断」を宣言し、交換留学生に対して留学先からの帰国を要請しました。
また、受給していたJASSO(日本学生支援機構)の給付型奨学金も停止となりました。これにより、金銭面の援助が絶たれました。
この措置は大体どこの大学も同じで、当然、我々留学生らは混乱に陥りました。
なぜなら、帰国するのにも相応のリスクがあるからです。
- 感染が拡大している状況で、多くの人が行き交う最も感染リスクが高い場所であろう公共交通機関や空港を利用し、帰国後に自分が感染源となって家族や周囲の人に感染を広げてしまうのではないだろうか?
- 帰国までには様々な手続きをする必要があり、すぐに帰国できるわけではないので、帰国準備を進めるうちに情勢が変わるのではないか?
- 減便で予定通りフライトできるか分からない
などなど、考えだしたらキリがないですね。
そして、
「 今、大学の指示に従って帰国することが本当に正しい選択なのか?」
そういう疑問が、当然生まれてきました。
そもそも、ドイツは感染者こそ多いものの、致死率は0.4%ほどでした。
これはドイツの医療機関・医療システムが世界一と称されるほど充実しているからだと思います。
また、僕自身も感染した後のことを想定して、まずはどこに電話をかけて指示に従うのか、などシミュレーションもしっかりしていました。
テロや災害の危険と違い、ドイツ国内にいても適切な対策、対応をしながら滞在を継続する方が、今焦って下手に帰国に向けて動くより安全なように思えたのです。
よって、大学側に滞在の正当性を何度も主張しました。しかし、大学側のレベル2になったら交換留学は中止、という考えはゆるぎませんでした。規定で決まっていることなので仕方ないかもしれませんが…
なので、僕は大学側に交渉するのは諦めて、自己責任で滞在する方向で考えました。もちろん家族と何度も話し合って、同意を得た上での決断でした。
そもそも、大学側の指示に従ったところで、奨学金は既に停止されているし、航空券代や帰国後のホテル滞在費を援助してもらえるわけでもないので、ただ指示に従って帰国することに全く納得できませんでした。
そんな状況の中で、周りの日本からの留学生は帰国に向けて動き始めます。
無理もないですね。 帰国すれば万が一感染した時の安心感も違うし、第一、大学が帰ってこいと言ってるので。
それにドイツに残ったところで、この先授業開始の延期どころか、夏学期の存在すらどうなるか…。満足な留学生活を送れない可能性は十分にあります。
ただ僕は、また大学に通ったり、みんなでパーティーしたり、旅行したり、そういう可能性がわずかでもあるならそこに賭けたいと思ったんです。子供みたいなこと言ってるのかもしれませんが、それだけ留学先での生活が充実していて、ドイツに対する思いも強かったんだと思います。
「交換留学生」という身分を深堀りしてみた
自己責任で滞在を継続する、と決めたのは良いのですが、それには色々問題が生じてきます。
一番は、留学先での自分の扱いがどうなるかです。
どういうことかというと、そもそも僕は大学間の交換留学プログラムによってドイツに派遣されているので、交換留学が終了になった時点でドイツでの「学生」としての身分を失うのではないか、ということです。
万が一ドイツの大学から除籍されるのであれば、学生寮も追い出されるし、学生ビザも失効されるので、現実的に「自己責任で滞在」というのは不可能。
つまり、これは100%の強制力を持った「帰国命令」ということになります。
滞在とか、そういう余地は0%ってことになります。
しかし、日本の大学からは「早急に帰国することを要請する」としか言われません。
そこで、両大学の間の規約がどうなっているのか、それを確かめてみようと思いました。「交換留学」って突き詰めるとなんやねん、という所ですね。
ということで、日本とドイツの両大学に交換留学が終了しても自己責任で滞在したいという旨と、その場合自分のドイツでの身分はどうなるのか、ということをメールで聞いてみました。
加えて、ドイツの大学側には、万が一交換留学プログラムが終了しても、僕を「学生」として置いてもらえないか、という交渉もしてみました。
色々あったけど、帰国決定
この質問に対して最初に反応したのは日本の大学でした。
これまではメールでのやりとりだったが、スカイプで直接話したいと。これは只事ではないな、と感じました。
で結局、このスカイプの内容というのは、「2日後のフライトで帰国」という要請でした。帰国に関わる諸々の手続きは完了していなくてもいいから、とりあえず荷物まとめて帰ってこいとのこと。 それくらい緊急の要請だと。
これに対してはさすがに抗議しました。というか、そもそもドイツ継続滞在に関して話し合う予定だったので面食らいました。
で、とりあえず一番肝心な「除籍されるのか」について尋ねたところ、日本の大学側が掛け合えばそうなるので、当然ビザも失効します、とのこと。
この瞬間、ドイツ滞在という選択肢は無くなりました。
…正直、もっと早く言って欲しかったですね。先にそれを言ってくれれば僕だってもっと早くから帰国に向けて動きましたよ。
もちろん大学側も初めての対応で混乱しているのは十分理解できますが…
ただ、大学側も僕らの事情を理解してくれて、帰国後の14日間のホテル滞在費を援助してくれると言って頂きました。
帰国のリスクについて一番恐れていたのは「家族への感染」だったので、ホテル代を援助してくれれば帰国のメリットもかなり出てきます。
ということで、色々ありましたが、この時点で「2日後のフライトで緊急帰国」を決断しました。
帰国までに必要な手続きすべてと(手続き完了は確認せずに帰国)、航空券・ホテルの予約、部屋の片付け、荷物のパッキング…、これらを2日でやりました。気持ちの整理などしている暇はありません。頭がどうにかなりそうでしたw
でもまあ、結構かかると思っていた帰国準備が2日で済んで、ホテル代も援助してくれることになったので、それなりに帰国にもメリットがあり、今では帰国して良かったかなと思っています。
しかし、驚いたのはドイツの大学側の対応でした。
「あなたの身分について上と話し合った結果、仮に交換留学が終了しても、本校の『学生』としての身分を夏学期の間継続することを決めました。」
と。
ここまでやってくれるドイツの大学の心意気には、本当に感動しました。
…まあ、この返事が来たのは帰国前日だったのですがw
てなわけで、色々あったのですが、無事帰国することができました~。検査も陰性だったので、とりあえず一安心です。
途中、アムステルダムで日本行きの便がキャンセルになった時はどうなることやらと思いましたがw
今後の活動
留学前に1年間の休学届を出していたので、現在、僕は休学中ということになります。
復学という手もありましたが、理系なので4月から復学しても必修単位が取れないので、卒業も早まらないし、意味ないんですよね。
つまり、9月まで晴れてプー太郎生活です。
ということで、時間がたっぷり取れそうなので、これからの日本の生活にワクワクしております。
で、興味ないかもしれませんが、この休学中に何をやるかということを別記事にリストアップしました。
具体的には、
- Webサイト/ページ制作案件の受注(フロントエンドの学習)
- Python, DjangoでWebアプリ作成
- ブログ150記事
- TOEFL, TOEIC受験
- IT系の企業にインターン(就職関係なしに興味で)
- 曲作り・シナリオ制作
- トレーニング、体作り
といった内容になっております。
休学予定がある人とか、何かしたいけど何したらいいか分からん!、という方は良かったら参考にして下さい。一緒に頑張りましょ~。
コロナとドイツ留学生 まとめ
コロナの影響で僕が日本に帰国するまでの一連の流れをまとめました。
改めて振り返ることができてスッキリしました。色々あったんだぞ!って書き殴れた気がして笑
海外からの帰国者の感染が連日ニュースで取り上げられていますが、やむを得ず緊急帰国したら陽性だった、という方もいるので、そこらへん理解して頂けると嬉しく思います。
人類がコロナに一刻も早く打ち勝って、コロナのせいでドイツから緊急帰国したんだよーって、笑い話ができるようになることを祈っています。
それではまた~
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